【会員の新刊紹介】いからし ひろき著『開運酒場』

いからし ひろき著『開運酒場』

いからし ひろき・文、芳澤ルミ子(よしざわ・るみこ)・写真『開運酒場』
(自由国民社、☎03-6233-0781/1300円税別)

「呑(の)んで開運!」と杯を交わし、通いつめれば運が開ける酒場があるという。
なんだか飲んべえならずとも興味をそそる。

会員のいからしさんは「特に旅と酒場取材が得意」、共著者の写真担当・芳澤さんは「酒に目がない自他共に認める酩酊カメラマン」と名乗る飲んべえ仲間の力作本だ。
表紙は東京・新橋の飲み屋街の見慣れた夜の光景。
レトロの響きあふれる烏森神社界隈の写真を掲げ、千鳥足のサラリーマンらしき姿が写る。

飲み屋街をぶらぶらして神社神宮によく出会う。
飲むのが先かお参りが先かはともかく、筆者は酒場と神さまの存在が一体化していることに気づく。

開運酒場には御札(おふだ)やだるま、招き猫など縁起物とお神酒(みき)があり、幸せな居心地の良さがあり、店主には拝みたくなる福々しい顔やオーラ、カリスマ性がある。
黙々と杯を傾ける常連客たちの姿は祈りを捧げる信者のようだ。
「より良い明日」を祈るのは神社仏閣も酒場も同じ。
神さまにご利益(りやく)をいただき酒場に元気をもらい「運気の好循環」と言ってまた一杯。
お参りしたあと「お清めと称して近くの酒場で一杯飲(や)る」のが楽しい。
いま流なら、パワースポット詣でに酔いしれるのか。
運はいろいろ。恋愛運、家庭運、出世運に成功運、商売運、勝負運、ギャンブル運、願掛け、厄除け、、、。
ここに載った居酒屋やバーは20軒ほど。
ネットなどで囃される店を紹介するガイドブックではない。
筆者独自の好みと五感、六感を働かせて見つけた店ばかり。
地域も特に脈絡があるわけでなくランダムな選びで、全国に知られた飲食街に限らない。
足で稼いだレポートで気楽に読める、軽妙洒脱な文章に思わず暖簾(のれん)をくぐりたくなるようなカラー写真があれふる。

(文・林 莊祐)

いからし ひろき著『開運酒場』