◇石井宏子(いしい・ひろこ)著『感動の温泉宿100』
(文藝春秋、☎03-3265-1211/1050円税別)
自ら「旅人」と名乗る筆者は毎年200日以上も旅に出て1年の半分は宿で眠り、感動の温泉との出会いが無上の喜びという。
旅は「人生のご褒美」と感謝し、温泉は「地球に生きているご褒美」とほれ込む。
体の芯まで骨の髄まで、絶妙・躍動・熟成の湯のご褒美に浸り、たまらなく居心地良い100の温泉を選んだ。
絶景の宿、素肌の湯、美食の宿、自噴泉の宿、魅惑のぬる湯、雪景の宿など12章に分け、宿のグルメとともに紹介する。
湯を語る言葉の数々に筆者のこだわりを見る。
肌をベールに包み、夢心地の非日常、滋養たっぷり肌代謝、脳疲労をリリース、アンチエイジングで自律神経を整え、のんびり憂き世を忘れ、贅沢な至福の時、温泉は偶然の賜物、秘湯の楽園、奇跡の瞬間と綴る。
フレッシュ、パワフル、ストレッチ、密着感、開放感、浮遊感、醍醐味、幻想、妖艶、驚き、壮大、圧巻、ブラボーと称え、水滴が踊る、癒える、くせになる、ほんのり、しっとり、穏やかな温もりと風に触れる葉の音に寛ぐ、と続く。
輝き、まばゆく、きらきら、柔らか、滑らか、清々しく、さっぱり、シュワッと、シャキッと、プチプチ、うっとり、ぐるぐる、ぐぐっと、ぎゅっと、ぐぐぐっ、びっしり、しっかり、どっしり、くくく~、く~~う、ひゃっほー、じんじん、じわじわ、ひたひた、すべすべ、ツヤツヤ、つるつる、もちもち、ぬるぬる、とろとろ、とろん、とぅるん、ぷくり、ぷくぷく、ぷんぷん、ふんわり、ほんわり、ふわふわ、ほわーん、ぽかぽか、ほっこり、こっくり、こんこんと――あらん限り温泉の形容を書に詰め込む「百湯百様」の取材・表現力を持つこの旅人に書評子からもご褒美を上げたい。
(文・林 莊祐)
=「旅びと」2018年11月号掲載