【会員の新刊紹介】近藤裕(こんどう・ゆたか)著『ベターハーフ』

ベターハーフ

◇近藤裕(こんどう・ゆたか)著『ベターハーフ 貧困・戦争・苦学・・・。でも、良き妻を得て』
(文芸社☎03-5369-2299/1300円税別)

タイトルは、ずばり「良き伴侶」。副題に「貧困・戦争・苦学・・・。でも、良き妻を得て」とある。
生い立ちから戦争、就職、夜間高校・夜間大学通学、開業、喜寿・金婚、社会奉仕、紺綬褒章受章など、伴侶への思いを交えながら素直に書き綴った。
1930年生まれ。鳥取県出身。
全国の国税局や税務署勤務20年のあと東京・国分寺で税理士事務所を開いて46年、「門閥もなく、財閥も閨閥(けいばつ)も何もない」そんな環境の中で「稼ぐに追い付く貧乏なし、という言葉を信じて」「ただただ頑張って走るしかなかった」と84年間の日々を思い起こす。
このところ関心を呼ぶ自分史ふうにまとめているが、筆者は「単に自分の半生を振り返って、思い出すままにあれこれと書き記した、いわば只(ただ)の思い出の記です」と言う。その肩ひじ張らない書きぶりで表わした人生の旅は読者の共感を呼びそうだ。

 「国家的に偉大な業績を挙げたわけでもなく」「社会に多大な貢献をしたわけでもありません」と振り返りながら、「一戸を構えて妻子を養い」「その余力で業界や地域など、世間様に対して幾らかのお手伝いが出来たことは良かった」と。「わがままな私が大過なく過ごして来られたのは、偏(ひとえ)に(妻)幸子(ゆきこ)の優しさと我慢強さの賜(たまもの)」と結ぶ。その愛妻を2年半前に亡くし、「今でも、夜家に帰ると真っ暗で誰も居ないというのは、この上なく寂しいものです」。葬儀のあと「何か月もの間布団をかぶって泣いていました」と心の内を明かす。「人生は、代々引き継いで行くリレー・レースのようなもの」だから子や孫たちがこの書を見て「私の生きた時代と、私の生きざまを偲ぶよすが」になればこの上ない喜びという。
(文・林 莊祐)         

=「旅びと」2015年9月号掲載

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