奥飛騨の宿 故郷（ふるさと）

中野富美男さんの宿｜岐阜県高山市・福地温泉

福地温泉は奥飛騨温泉郷の中では独特の雰囲気が漂う温泉地だ。国道から少し逸れた場所に古民家を移築したりして、それ風に造った10軒ほどの宿が隠れ里の風景を醸し出しているからだ。

この宿はメイン通りからさらに少し奥まった場所に建つ。当初は大通りに面していたが、2代目の中野富美男さんが代替わりを機に、平成4年に現在地に移して全面的に建て替えた。大学時代を京都で過ごした中野さんの洗練されたセンスが、宿全体に見事に傾注されている。

広大な敷地に建物は大きく4棟あり、それぞれが廊下で結ばれている。ロビーや帳場のある棟は荘川村から、2階棟は神岡町から、食事処のある棟は近くの中尾高原から、いずれも築100年超の旧家を移築。さらに和洋室の離れ6棟を新築した。

風呂は男女別の内湯＋露天風呂と、貸切露天が2ヵ所。囲炉裏を囲む食事処では、飛騨の郷土色をふんだんに盛り込んだ料理が堪能できる。ゆったりとした空間の美しさが印象に残る佳宿である。

（飯出敏夫）

◆トップの画像は・・・囲炉裏を切ったロビー。この宿の象徴的な空間だ