板倉あつし

大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」で沸き立つ滋賀県は琵琶湖北、長浜地方にはなんとも不思議な郷土料理があります。

焼き鯖を煮崩れないように笹で縛りつけて、甘辛く煮込み、その汁で素麺を炊き上げます。「焼鯖そうめん」と呼ばれ、地元スーパーでは総菜コーナーで当たり前に販売されています。しっかりと鯖の味が染み込んだ素麺だけでも販売される有り様には驚きです。

娘を思いやる親心が育んだ郷土食

焼鯖そうめん

「焼鯖そうめん」は、元来「五月見舞い」と呼ばれ、農繁期に嫁の実家から嫁ぎ先に、精が付くようにと届けられた思いやりの証の郷土食。市内の有名店「翼果楼」へ、しっかりと味の染み込んだ素麺をご飯に乗せて食べでも良し、酒のアテ(つまみ)に良し。焼鯖の旨さは特筆ものですが、その焼き鯖にひと手間かけて炊き上げる「焼鯖そうめん」は、揃えて盛り付けされた素麺は美しく、長浜名物、長浜を訪れたら必食のご当地グルメです!

のっぺいうどんと焼鯖すし

安価な素材も真心込めて美味にする

そしてもうひとつは、庶民の味方、安くて旨いB級グルメのご紹介。JR長浜駅徒歩3分、地元で評判の店「鳥喜多」を訪ねました。

親子丼580円とかしわ鍋420円

評判の「親子丼」は580円。フワフワの玉子にタップリのつゆ、真ん中には黄身がポトリ。優しくまろやかな割り下(出汁)でホントに旨い。「かしわ鍋」は420円。鶏肉、ネギを玉子でとじたスープ鍋といったところでしょうか、ライスを入れて雑炊風にするも良し。ステンレスの小鍋がまた、昭和の風情満点です。

大正6年創業の老舗のご主人村田信治さんにインタビュー。安さと旨さ両立の秘訣は鶏肉のブランドにはこだわらない事。安価な素材ながら丁寧にスジを取り除き、そのスジとガラをじっくり煮出して作るタレが旨さの基礎となります。なるほど食にうるさい関西と頷ける軽くてあっさりとしていて、後味も素晴らしい。どちらもコストパフォーマンスは満点です。
そして今回のオマケ。「鳥喜多」の並びにそびえ立つ摩訶不思議でレトロでキッチュな建物!その名も「長浜タワービル」恐らく昭和30年代中期か後期の建築物でしょう。長浜のランドマークたる風格充分、違和感も満点です。

通天閣、京都タワー、神戸ポートタワーと並ぶ「関西4大タワー」の一つと珍説を唱える人もいるんだとか?

地元の資産家が東京タワーに触発されて建てたこの建物、横に回り込んで、その平べったさにまたまたビックリ!金属製のタワーやデコラティブな手すりなど、誠に僭越ながら、B級建築遺産に認定させて頂きました。

○翼果楼(よかろう)ホームページ
長浜市元浜町7-8 tel.0749-63-3663
○鳥喜多(とりきた)
長浜市元浜町8-26 tel.0749-62-1964
○ 茂美志や(もみじや)
滋賀県長浜市元浜町7-15 tel.0749-62-0232
○社団法人 長浜観光協会

板倉あつし