板倉あつし

今からおよそ1年前、某自動車雑誌の連載企画「A級温泉とB級グルメを探す旅」で、甲府郊外の温泉旅館を訪れました。B級グルメは、テレビ番組で紹介されていた「鶏のもつ煮」を是非取材したいと思い、市役所に問い合わせると、「甲府とりもつ煮」元祖「奥藤本店」を紹介してくれました。

「奥藤本店」の「甲府鳥もつ煮」は戦後間もない昭和25年頃に誕生。まだ砂糖が貴重だった時代、甘辛いタレをまとった鳥もつ煮はお客様に大好評で、いつのまにか甲府一帯に広がり、地域のそば店の定番料理となったのだとか。

煮込むというより炒り煮が甲府流

もつ煮といえば大鍋で煮込んだものが一般的ですが、「甲府鳥もつ煮」は炒り煮風で甲府独特の製法です。新鮮な鳥のレバー、ハツ、砂肝、玉道(別名キンカン。生まれる前の卵)を鍋に入れ、砂糖と醤油だけで味付けします。

調理のコツは強火と素早い鍋振り。鍋の持ち手が焼け焦げてすぐに使い物にならなくなるため、奥藤本店では鍋をペンチで掴んで振る独特の技法を取り入れています。うなぎの蒲焼のような甘辛い味が、

甲州鳥もつセット

ご飯のおかずや酒の肴にぴったり。甲府の地では老若男女を問わず愛され続けているご当地グルメなのです。注文が入ってから調理するので15分ほどかかりますが、待ち遠しい時間こそが料理を美味しくする秘訣なのでしょう。
この店には興味深いオリジナル料理も(甲州流かつ丼、手作り刺身こんにゃく、霜降り馬刺し、鳥もつ入りもり蕎麦)沢山ありますのでお試しを。

みなさまの縁をとりもつ隊が大活躍

平成20年には、甲府市役所職員の若手有志がまちおこし団体「みなさまの縁をとりもつ隊」を旗揚げ、「甲府鳥もつ煮」のブランドで甲府のB級グルメとして全国に向けPR活動を開始。21年には愛Bリーグに加盟、準会員を経て22年4月には正会員に昇格しました。

第5回B-1グランプリin厚木にて


平成22年9月18~19日に開催された全国のB級ご当地グルメの祭典「第5回B―1グランプリin厚木」では、並居る競合を押しのけて見事に優勝。私も会場を取材しましたが、何時間も一心不乱に強火で鍋を振り続けた「奥藤本店」のご主人塩見大造さんや、スタッフの皆さんの左腕は火傷状態、見た瞬間に今回のグランプリはココだ!と思ったカンは的中。自分の事のように嬉しくなりました。

○奥藤本店/山梨県甲府市国母7-5-12
TEL055-222-0910 ホームページ

板倉あつし