文・板倉あつし/写真・吉田良正

狩野派の絵師でありながら卓越した技術で鏝絵(こてえ)作品を数多く残した入江長八となまこ壁の町並みで有名な松崎町では、町で生み出した優れた特産品を「松崎ブランド」として認定する制度が確立され地域の活性化に一役買っています。

特産の「川のり」でブランドづくり

伊豆半島でも松崎港に流れ込む那賀川と岩科川の河口にだけ繁殖する「川のり」は松崎ならではの早春の味覚ですが、この川のりを使って松崎ブランド「川のりコロッケ」を開発したのが、松崎で創業78年を迎える「アサイミート」の3代目店主浅井眞氏。一昨年の暮れに当地を訪れた時に取材をした折に、川海苔特有の豊な風味とサクサクと軽いコロッケに舌鼓を打ちました。その際「もっと沢山川のりを使って風味豊かに」と話したところ、川のりを倍増。なのにコストは10円アップに留めた努力と情熱に脱帽、コロッケの商品特性上、あえてB級グルメと言わせて貰いますが、味はもちろん特A級です。

風味豊かな「川のりコロッケ」ひとつ150円也

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元祖松崎ブランドに混ぜ物無し

昭和35年頃から松崎の取材を重ねている旅ペン会員の吉田良正氏に紹介されてからこの地を訪れると必ずといって良い程、買い求めている「はやま」のさつまあげは創業昭和29年、東京深川の老舗「蒲清商店」(現在の店舗は江戸川区小岩)で親子二代に渡って修行したその味は、甘過ぎず、さっぱりとした江戸前の味わいでありながらコク深く、プリプリとした食感がたまらない。何もつけずに、そのままで、生姜醤油、和辛子も良し、おでんに仕立てればこれまた抜群の美味さの練り物の白眉と言える逸品です。

若旦那の端山智充さん曰く、昔は地元の定置網にかかった魚を材料にしていたのだそうですが、近年の漁獲の減少から、商社を経由して取り寄せた「イトヨリダイ」のすり身を使っています。余計な混ぜ物は一切せず、挽いても熱を持たず味が落ちない石臼で調合したネタを家族でコツコツと揚げる。大量生産とは程遠い、効率とは無縁の家族経営だからこそこの味が保てるのでしょう。西伊豆の小さな町の情熱あふれる職人たちの作り上げる二つの美味に敬意を表して謹んでご紹介します。

さつまあげのはやま

○アサイミート ホームページ
静岡県賀茂郡松崎町松崎451-1 tel.0558-42-0298

○さつまあげのはやま ホームページ
静岡県賀茂郡松崎町495-111 tel.0558-43-3535

文・板倉あつし/写真・吉田良正