テレビの連続ドラマから時代劇がなくなって久しい。筆者のような団塊世代では、子どもの頃のヒーローは「月光仮面」か、多くの剣豪だった。そんなことを考えていて、2015年11月に、奈良市の「柳生の里」にブラリと出かけてみた。

柳生の里は奈良市の北西部にある。京都府とも隣接し、隠れ里の雰囲気を残している。柳生家の墓所は、臨済宗大徳寺派の芳徳禅寺にある。

芳徳禅寺の柳生家墓所

石舟斎宗巌、柳生宗矩、柳生十兵衛の親子孫三代をはじめ、一族が整然と眠る。もともと、宗矩が父石舟斎の菩提を弔うために創建した。開山は「たくあん漬け」の名の由来説がある沢庵和尚という。

資料館になっている柳生藩家老の屋敷

小さな丘の上の柳生藩陣屋跡は、建物こそないが史跡公園として整備されている。家老職が住んだ立派な屋敷は現存し、資料館になっていて柳生観光協会も入っている。

戸岩谷に、真っ二つに割れた巨石「一刀石」がある。修行中の石舟斎が天狗と試合をして、一刀のもとに切ったと思うと、それは石であった、という伝説がある。

柳生の里の「十兵衛食堂」

昼食は柳生小学校に近い十兵衛食堂に入った。NHK大河ドラマの第9作「春の坂道」撮影当時の写真パネルが飾られていた。

中村(後に萬屋)錦之助が、柳生宗矩の生涯を演じたが、この食堂の2階で、錦之助の衣裳替えなどが行われたという。

ほかにも、柳生新陰流の「剣禅一如」の精神を伝える正木坂剣禅道場、柳生焼窯元、柳生花しょうぶ園などがある。

訪れたのが観光シーズンから外れた11月ということもあって、静かな空気ばかりが流れる柳生の里だった。時折り、剣豪の鋭い息づかいを感じた。

京都在住のフリーライター・井上 年央
投稿日:2015年12月20日)