兵庫県北部の山峡に12軒の旅館が点在する「湯村温泉」(美方郡新温泉町)は平安時代に慈覚大師が開湯以来、98度の高温の源泉が地表に湧き出る名湯だ。

1981年からNHKで放映されたドラマ「夢千代日記」の舞台になったことでも有名。温泉街には主演の吉永小百合をモデルにした「夢千代像」がある。

この旅情豊かな湯村温泉に2016年3月15日、山陰海岸ジオパーク推進協議会のツアーで初めて一泊した。

兵庫県の温泉といえば、一般には有馬温泉と城崎温泉が“ツートップ”と思われがちだろう。湯村温泉は交通の便こそ良くないが、他の温泉にない魅力が潜む。

その一つは「荒湯(あらゆ)」。石で囲った源泉に、網に入れた卵や野菜を簡単に浸けられる。誰でも体験でき、ゆで卵は格別の味だ。

98度の源泉が湧き出る「荒湯」

宿泊した「朝野家」の朝野泰昌社長はアイディアマンで、「れん乳缶」を源泉に6時間浸けておくと、生キャラメルになることを発見した。スプーンですくって食べてみた。温泉キャラメルは贅沢な味だった。

湯村温泉観光協会では、「湯村温泉・幸せの隠れハートを探せ!」というイベントを展開中だ。

お寺の建物の節穴もハート型

温泉街にあるハート型を5つ見つけて写メで撮影、観光協会に持ち込むと記念品がもらえる。お寺の建物の金具や節穴、石像の一部分、道の手すりの模様…どうやら80カ所ぐらいはあるらしい。新発見をすると、そのハートの命名権が与えられる。

獅子と猩猩の伝統芸能・千谷麒麟獅子舞

新温泉町には伝統芸能「千谷(ちだに)麒麟獅子舞」があり、奉納は4月と9月だが、旅館で特別に見せてもらった。その心づかいに感謝し、湯村温泉を後にした。

京都在住のフリーライター・井上 年央
投稿日:2016年3月28日