マラッカ海峡を巡る7万トンの大型客船「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」でマレーシアのペナン島とマラッカを訪ねてきた。私は大型客船の旅にはなぜか縁がある。最も印象に残っているのは1990年のQE2(クイーンエリザベス2世)での韓国・馬山から大阪へのクルーズ。最終日の船長主催のディナーの華やかさに圧倒され、まだ若かった私はクルーズに魅せられてしまった。
この船旅は「国際花と緑の博覧会」でホテルとして利用されたQE2が大阪港に入港するのを記念して募集されたもの。当時、関西の総合雑誌の編集者だった私は取材での乗船であった。おそらく高額のため売れなかったのだろう、最上クラスのキャビン(船室)を与えられ、仕事ながら「マダム」気分を満喫したのだった。
それから何年か経って豪華客船「スーパースタージェミニ」のマラッカ海峡クルーズのデビューを取材。この船はアジア各国の乗客が大半で、QE2に比べるといくらか庶民的な雰囲気であった。
当時掲載した新聞を読み返すと最年長は兵庫県から参加した83歳と73歳の夫妻。「日本からの航空運賃とシンガポールでのホテル1泊を含めて一人10万円台」とかなりリーズナブル。その後神戸港から出港することになったスタークルーズでは韓国の釜山や上海などにも出かけたが、このラインは利用客数が伸びず数年で運行が停止された。
さて先日のクルーズは雑誌の取材とNHKラジオの中継を抱えての旅となった。今回の旅仲間の最高齢者も83歳の女性。背筋がシャンと伸びたおしゃれなマダムだ。80歳代が3人、70代も3人、60、50は「まだまだ若者」というグループだった。
寄港地では軽装で下船。船専用のカードが船上での財布代わりであり、身分証明書であり、キャビンの鍵でもある。横揺れ防止のフィンなどの効果で船酔いの心配も無いに等しい。
「寝ている間に次の寄港地に着くのが魅力。船のすぐ近くまで観光用の車が迎えに来てくれるのもありがたかった」と71歳の女性。身軽に観光に出かけられ、夜は荷物の開閉をせずにドレスアップができる。レストランも美容室もプールもエレベーターに乗るだけで良い。まさに「動くルゾートホテル」。車椅子での移動にも配慮がなされている。クルーズは高齢者が楽しめる旅なのである。