【会員の新刊紹介】市川礼子(いちかわ・れいこ)著『石ってふしぎ』

石ってふしぎ

◇市川礼子(いちかわ・れいこ)著『石ってふしぎ』
(柏書房☎03-3830-1891/1800円税別)

海辺や河川敷、里山の道に転がる何の変哲もない石ころ。
子供のころから、そんな「路傍の石」に面白い形、不思議な形を見つけ集めていた。
いつしか著者は珍しい「石」を全国各地に訪ねるようになり、興味は石仏や石像、石垣、石畳、石段、石塚、石塔、石門、石橋、石塀、古墳など広がり、どんな石か、伝説、信仰、生活など由来を細かに調べ歩いた。

本書に選んだ「ふしぎな石」の数々は約百カ所。
日本海の岩礁に刻まれた石仏群「十六羅漢岩」(山形県)、直径6㍍の半円形に放射状に広がる「根室車石」(北海道)、雪解けに芽吹く木々に似た青緑色の石が並ぶ「大湯環状列石」(秋田県)、日本銀行の建築石材となる御影石の「稲田石採掘場」(茨城県)、1人の石工が8万個の石を2年がかりで積み上げたという「森将軍塚古墳」(長野県)、高さ2.6㍍横3.8㍍の大きな岩にモアイ像風の顔が乗った「万治の石仏」(同県)、時代ごとの様々な積み方が見られる「金沢城の石垣」(石川県)、円錐状に高く積まれた「八丁味噌の重石」(愛知県)、1㍍四方ほどの石の表面を大蛇がくねくねと上がるように見える「蛇石」(滋賀県)、圧巻巨石が連なる「大阪城の石垣」(大阪府)、石像の顔を白く化粧し紅をさした「持明院様」(鹿児島県)、海岸に六角形の石を敷き詰めたような自然の奇岩「畳石」(沖縄県)など、興味深く訪ねてみたくなる石ばかり。石っておもしろい!!

この本の装丁はコデックス装という。表紙カバーを外して開くと左右ページが真っ平らになる綴じ方で、収録した豊富な見開き写真が中央の綴じしろで歪むことなく見やすい。
(文・林 莊祐)

=「旅びと」2016年7・8月号掲載

石ってふしぎ