◇いつも青春(いつも・せいしゅん)著『フェアウェイの風』
(幻冬舎ルネッサンス☎03-5411-6710/1400円税別)
さわやか気分あふれるペンネームを持つ旅ペン理事・阿部花山さんは俳句とその背景に感じる「句景」を描き続けている。
著書はゴルフを楽しみながら感じた人生模様を13話の短編小説集で綴る。
数々のグリーンを訪ね、ティーショットからアイアン、パターまでプレーを克明に描写しながら男と女の微妙な心の動きを探る。
キャディーやレッスンプロ、同伴プレイヤーとの葛藤に迫り、ギャラリーの女性と不思議な縁、取引先とのコンペ模様、亡き父への思い、気の置けない同級生仲間らと語らい、そこに一期一会と言える人間模様が繰り広げられる。
著者は人間関係の煩わしさから離れて楽しいだろうとコースを回ったという。
しかし早朝一人のゴルフは面白くなかった。「煩わしい人間関係があっても、やはり、人は一人で生きてもつまらない」。
人間は人との間で生きる、「人はひと中」の思いを込める。
全編に季語や草花を織り込む情景描写が美しい。
白梅、桜、藤、ブーゲンビリア、紫陽花、向日葵、朝顔、彼岸花、野菊、吾亦紅(われもこう)、野水仙、福寿草、秋桜(コスモス)――ゴルフ場へ出掛けるたびに心を和ませてくれる四季折々の大好きな13の花を選び、句を添える。
各話末尾に付く75項目ものゴルフ用語の平易な解説が、あまりプレーに出掛けない読者にも興味を増す助けとなっている。
(文・林 莊祐)
=「旅びと」2014年1月号掲載