新進作家「和田竜」のデビュー作であり、直木賞にもノミネートされた「忍の城」を原作とする映画「のぼうの城」(豊臣2万の大群に500人で立ち向かった成田長親の物語)が2011年秋に封切られます。この映画の舞台になった関東七名城「忍城」のある埼玉県行田市には局地的に存在する不思議な食べ物があります。
「ゼリーフライ」は行田市持田の「一福茶屋」(現在は閉店)の主人が、日露戦争で中国東北地方に従軍した際、現地で食べられていた野菜まんじゅうを基にアレンジしたものと言われており、明治後期の生まれ。
おからをベースにジャガイモに人参、葱などを入れて練りこみ、衣は付けずに素揚げし、出汁の効いたソースをくぐらせる。
おからとジャカイモの配合、出汁ソースの味付けには各店それぞれが工夫を凝らしています。菓子の「ゼリー」ではなく、形状や大きさが小判に近いことから「銭フライ」と呼ばれていたものが訛り、「ゼリーフライ」に変化したと伝われています。
「フライ」は富来で縁起良い
もう一つは、油で揚げない、鉄板で焼く「フライ」です。やや緩めに水で溶いた小麦粉を鉄板の上で薄く伸ばし、長葱、干海老、目玉焼きなどを載せて木製の鍋蓋でギュッと押し付けて焼くのが特徴。焼き上がりにウスターソースを塗り、青海苔を振りかけます。
「木製の鍋蓋でギュッと押し付けて」は、関西のお好み焼き通が聞いたら激怒しそうな行為ですが、
押し付けるからこそモチモチに仕上がります。
埼玉県行田市の局地的B級グルメ
今回取材した「かねつき堂」の店長早瀬巌さんは「店によっては豚肉、イカ、キャベツなどを入れるケースもあるようですが、それではお好み焼きになってしまい、フライの伝統が守れません」といいます。
「フライ」は大正末期、行田で盛んな足袋工場で働く女性工員に、休憩時のおやつとして出し始めたのがきっかけで、水焼き、フライ焼きと呼ばれていました。低価格で手軽に食べられて、腹持ちが良いのでファーストフードとして親しまれ、後にはフライ焼きから「フライ」へと略されました。
行田市の足袋工業の発展と共に広まっていったことから、布が来ると書いて「布来」、富が来ると書いて「富来」となんとも幸せな当て字で表現されています。
巷でB級グルメがもてはやされ、雨後の筍のように乱立する昨今、その歴史や背景から見ても正統派といえる行田の「ゼリーフライ」「フライ」はB級グルメの殿堂があれば真っ先に推薦したい食べ物です。
○かねつき堂 ホームページ
埼玉県行田市本丸13-13 tel.048-556-7811
○ 行田市観光協会 tel.048-556-1111 ホームページ