球春到来―。と、いっても、筆者の場合は野球でもなければ、サッカー(少年時代は右サイド・バックだったが―)でもない。球歴35年のゴルフである。が、寄る年波には勝てず、近ごろは、「三ズの川」(飛ばズ、寄らズ、入らズ)にとっぷりはまってしまった。
そんな体たらくを嘆いていた折の昨秋、霊験あらたかな「ゴルフ観音」があるのを聞き、参拝してきた。
ゴルフと観音様の取り合わせは、どうみてもミス・マッチだが、「困った時の仏頼み」という分けだ。
観音様は、群馬県安中市中秋間の瑞林山全性寺の境内にある。近在きっての曹洞宗の名刹だ。正式には「悟留譜(ごるふ)観世音菩薩」。13本のクラブを光背代わりとし、パターを手に人々の安穏を祈っている。
市内には全国大会を開催する名門ゴルフ場をはじめ、9か所。寺の周辺にも3コースある。青海正光住職には、朝夕、コースを行き来するゴルファーや従業員の姿を見るにつけ、好スコアとプレーの安全を祈らずにはいられなかった。知り合いの石材店に依頼して、平成2年10月、高さ約2mの像を建立した。
だが、そこは僧職、14本のゴルフ・クラブになぞらえて、仏の道を説くことも忘れていない。お釈迦様の悟りである「八正道」と「六波羅」を、14本のクラブになぞらえた。
例えば、八正道のうち、「正思惟」には、正しいマナーを身に付ける、「正業」は、下品な行為をしない、「正念」は、プレー中は前後の組に留意する、「正定」には、欲張らない、などの教えが盛り込まれている。
「ルールよりマナーが大事」の精神を重んずるゴルフの真髄を説いた趣意書、ゴルフ観音をモチーフにしたお守り、キーホルダーも売っている。本尊の前には、石川遼、横溝さくら、杉本英世、倉本昌弘ら超一流のプロのサイン入りボールが奉納されていた。その何人かは、本人が現地を訪れたそうだ。
御利益?ありましたよ。優勝も含め、ベスグロ(最少打数)など、数々の賞品を頂戴しました。
帰路は、わが国の「廃娼運動」の発祥地・安中教会で、日本近代史を考えてもいいし、足を延ばして、霧積温泉で「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでしょうね」と、つぶやくのも一興かもしれない。