福田 徳郎

地震という頼地殻変動が続く日本列島は、いつ沈むか判らないという学者も居る。

そのような落ち着かない日々だが、旧約聖書にでてくるトルコとイランとアルメニアの国境に聳えるアララット山と麓にある伝説の地を旅したのは3年ほど以前になるが、国境近くなので、あまり旅人がゆかないらしい。変わったところへの旅が大好きな僕は、熟年素浪人、何の仕事のオファーもない身分を良いことに、イスタンブールから車でひたすら東へと旅をした。


アララット山は標高5137m。天地を創造した神は、世界を崩壊させようと決心してノアに命じ、動物の雄雌を一組ずつ乗せて、大洪水を起こした。洪水に流され、40日間漂ったノアの箱船は、最終的にアララット山の中腹に漂い着いて、人間と動物が仲良く暮らすようになったというあの話だ。

トルコからは東へひた走り、軍隊が圧倒的に多いイランとの国境の町ドウバヤジットから約35km。山道を登ったユゼンギリ村のムサ山に漂着している伝説の方舟が発見されたのは、20世紀の半ば、米国人によってという。

その方舟のあった場所という船の形らしいものをとっくり拝観した。近くのビジターセンターでは細長い楕円形の物体を「これが方舟の部分」といって拝観料を取っている。もちろんこれは寓話とこじつけに違いないが、背景には万年雪に聳える山が輝いて、何となく話が纏まっている。

やがて日本も地殻変動で方舟の必要な大災害が神々の怒りでなく、地球の異変で起こるかも知れない。そのときのためか、非常事態の方舟は、もうすでに米国とロシアの手で宇宙に浮かんでいます。

福田 徳郎