井上 年央

フィリピン南部、セブ島の東側のマクタン島(国際空港がある)と、リゾート客が多いボホール島の間に、日本人が所有する東京ドームほどの広さのカオハガン島がある。島主は出版関係の仕事をリタイヤした崎山克彦さんだ。崎山さんは20数年前に趣味のダイビングでセブの海を訪れ、ちょうど売りに出ていたカオハガン島を知ったという。仕事のリタイヤを機に購入したときは300人余りの住民がいた。その人たちに退去してもらった方がいい、と助言する人もあったが、崎山さんは共存の道を選び移住した。

崎山さんは「何もなくて豊かな島」や「青い鳥の住む島」などの著書があり、島の自然、暮らしなどを紹介している。島には子どもが多く、今では島民が650人ぐらいに増えているそうだ。

サンゴ礁の海に浮かぶカオハガン島

オランゴ環礁の中にある島は、絶海の孤島とはいえないが、海は海らしく、空は空らしく、空気も空気らしい。まぶしい自然の中で、人は人らしく生きている。島にあるロッジで宿泊ができ、バーベキューを楽しんだり、シュノーケルやアクセサリー手作りなどの体験ができる。島の人たちが作ったお土産品も買える。ゆったり流れる時間をそれぞれに楽しめばいいのだろう。

ぜいたくな昼寝が楽しめる島の景観

島には、小さいながら小学校、教会、野外舞台、子どもたちのおやつを売る店、雨水を貯める水槽、共同トイレ、手洗い場、それにバレーボールネットとバスケットボールのゴールがある。

南の島にふさわしい子どもたちの笑顔

長年あこがれていたこの島を日帰りで訪れたのは、2015年1月30日だった。宿泊地のセブ島から車でマクタン島の船着場に行き、アウトリガー付きのカヌーで渡る。エンジンで走り、満潮に近いときは一直線の航路で30分ほどだが、干潮時は水深の深いところを選んで迂回する。1時間近くかかり、船はカオハガン島に接岸できず、上陸するには小さなカヌーに乗り換える。日帰りツアーについていた昼食の後は、昼寝をして帰ってきた。ただ、それだけの旅だった。

2015年2月24日掲載

井上 年央