蟹場（がにば）温泉

鬼川芳典（きかわよしのり）さんの宿｜秋田県仙北市･乳頭温泉郷

釣り好きの初代館主が沢に入り、サワガニの多くいる場所で湧く温泉を発見。蟹場温泉と名付けて湯治宿を開いた。江戸時代末期のことで、現館主の鬼川さんは4代目に当たる。

蟹場を代表する風呂として取り上げられるのは、大露天風呂の唐子の湯である。本館から外履きに履き替え、林の中を歩いて50m。同時に数十人が入れるのではないかという広い露天風呂が原生林の中に出現する。脱衣所は男女別だが、浴槽は一つで混浴。単純硫黄温泉で澄んだ湯だから、女性は女性専用タイムか、男性同伴で明かりがボウと点く夜がねらい目。怖いほど静かな露天風呂は神秘的である。

館内には男女別の石風呂や木風呂、露天風呂もある。浴槽も壁も天井も秋田杉を張り巡らせた木風呂が好きだ。無色透明で単純温泉。体を沈めるとたくさんの湯花が浮かび上がる。内風呂の味わいは多くの風呂に入ってこそわかる気がする。
入浴後はフロント前にあるリラックススペースで。蔵の中のような静けさと落ち着きがある。
（土井正和）

◆トップの画像は・・・「秋田杉作りの木風呂。サワガニ生息地ゆかりの石もある」