山に囲まれた京都では昔、新鮮な海の幸が手に入らなかった。魚を食べるのに工夫をこらした。大阪湾から淀川を遡って魚を運んだが、生きていたのは生命力の強い「ハモ」だったそうで、骨を包丁で丁寧に切り刻み、夏の京料理の名物になった。日本海からは塩をした鯖をかついで歩いて運んだ。鯖寿司は京都の祭りに欠かせない。
鯖を流通させた古道は、今では「鯖街道」の名で観光ルートになっている。福井県小浜市あたりから東に進み、熊川宿を通って南下、名刹・三千院で有名な大原を抜けるルートが有名になった。しかし、鯖街道はいくつもあって、小浜市の西隣の高浜町、おおい町、さらに南丹市美山町を通って京都市右京区京北を抜ける道筋を「西の鯖街道」という。沿線の高浜、おおい、美山、京北の4地域が一緒になって「西の鯖街道協議会」を結成、PRに努めている。
西の鯖街道の観光資源は「歴史」「自然」そして「食」だ。2011年9月には、京都市内の寺院の庭園で街道沿いの食材を使った料理の試食会が初めて開かれた。東京にも出店している人気イタリアンのシェフが腕を振るった。焼き鯖はもちろん、豊富な野菜類、古代米、美山町の自慢の牛乳などをふんだんに使った創作料理が並び、地酒が人と人のつながりを一層強くした。
2012年1月には、西の鯖街道協議会が京都駅の地下街で、名物の販売会を開いた。歴史街道のもつロマンが通行人の足を止めさせるのか、なかなかの人気だった。街道沿線の4カ所の公共宿泊施設が合同で宿泊割引制度をつくっている。協議会ではホームページ(http://sabanet.gr.jp)も開設した。
西の鯖街道は現在の国道162号とだぶる。雪には注意が必要だが、春を呼ぶドライブコースである。