食肉習慣が明治以降に始まった、日本人にとってジビエは、特殊な響きであり、深山に暮らすマタギなど、一部の民の特別な食文化でした。
ある文献によると「日本猿は特別美味、その肝は特に薬効が高い」「カラスは普通に食用とされていた」「モモンガの肝を薬として携行していた」「コウモリにタレを付けて焼いた」「白鳥は大味である」「タヌキは不味いが、アナグマは旨い」など、ジビエ食の記録は尽きません。
今回は誰でも勇気を出すと食べられる、奥鬼怒の温泉地「加仁湯」名物のジビエをご紹介しましょう。
この宿で食べられるのは、深山幽谷で捕獲する山椒魚の天ぷら。皆さん山椒魚と聞くとあの特別天然記念物オオサンショウウオを想像するようですが、違います。小さなイモリくらいのサイズ、種族としてはトウキョウサンショウウオ、ハコネサンショウウオの仲間です。カラッと揚げた山椒魚はクセが無く、腹に卵を持った個体も多く、山奥に暮らす人々の貴重な蛋白源、都市部に暮らす人々にとっては貴重な体験食と言えるでしょう。美味いか不味いかは体験しないと判断出来ない食材です(笑)。ほかに、鹿のルイベ(凍らして薄切りにした刺身)と熊の刺身(熊肉の刺身とは言え、冬眠前の、全身にたっぷりと皮下脂肪を蓄えた切り身ですから、大部分が脂身ですが、驚く程臭みもクドさも無い)、共に、ショウガ、ニンニク醤油との相性は抜群です。
しかし、今回、力を込めてお勧めするのは、熊のモツ汁。 随分と世界中の食に触れて来ましたが、これ程感動的に旨いモツには出逢った事はありません。良く洗って圧力鍋で煮込み、何度もアクを抜き、味噌と醤油で、大根と煮込んだ熊モツの旨さは、どんなモツ料理よりも、コク深く、クセが無く、噛む程に味わい深い、山の神様のお裾分けの味わいなのです。
決してアクセスが良いとは言えない加仁湯の人気の高さの裏側には「混浴のにごり湯」と「聖地、鬼怒沼ハイキングの拠点」としての素晴らしさ以外に、山椒魚や、熊モツのジビエが見栄隠れしています?!
奥鬼怒温泉 加仁湯
栃木県日光市川俣871
0288-96-0311
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