板倉あつし

白河ラーメンといえば、みちのく白河の地を有名に仕立て上げた「ご当地グルメ」の立役者。市内のいたる処にあるラーメン店は、70余店と驚きのラーメン密度です。
そんな白河に、私がここ数年ファンになり通い詰めている名店「手打中華すずき」があります。

訪れて最初に驚いたのは店の清潔さ!とかく脂ぎってしまいがちな床やテーブル、椅子のメッキの脚までピッカピカ。グラスの美しさたるや一流ホテルのバーにも引けをとらないほど。毎日閉店後の清掃に2時間掛けているのが頷ける美しさ、この真摯な姿勢こそが素晴しい味の秘訣なのでしょうか。マガジンラックにある書籍はナショナルジオグラフィック誌・・・うーん、只者ではない。

雲を呑むと書いて雲呑(ワンタン)と読む!

イチオシは「手打ワンタンメン」、娘の佐江子さんが、一つ一つ両手で押し頂くように丁寧にテーブルに運んでくれます。目から鱗が落ちるとはこのことでしょうか。とにかく美味いのです。
店主の鈴木司郎さんはS23年生れで若かりし頃はマツダロータリーを駆るレーシングドライバー、白河ラーメンの超有名店「とら食堂」の先代「とらさん」の弟子。先代はたいそう腕の良いラーメン職人であり、ワンタン職人、ギャンブルが大好きな先代の運転手として日本中のギャンブル場巡りをさせられたのだとか。

手打ワンタンメン1050円

雲を呑むと書いて雲呑(わんたん)、とらさん直伝のワンタンは、繊細かつ滑らかでシルクのハンカチみたいな、雲を呑む様な食感。このワンタンは女将の睦美さん(店主の司郎さんは、麺打ちとスープの仕込みで精一杯)の手打ちで、とらさん直伝のワンタンの継承者です。

麺はもちろん、こだわりの太め手打ち麺、チャーシューは那須塩原の那須郡司豚を使い、ボイルした後に炭火で仕上げて特製醤油で煮込んだ傑作。その煮汁は昔ながらの正統派中華そばのスープの素となります。

スープは同豚と宮崎地鶏の鶏ガラでじっくり仕上げた琥珀色の逸品。
海苔、長葱、青菜、なると、メンマ、チャーシュー、ゆで卵、ワンタンのと揃えば「手打中華すずき」の芸術品の完成です。

後継ぎの祥高くん(S52年生れ)のラーメン職人としての腕前にはご主人も太鼓判!祥高くんにはバイクのレースで全日本チャンピオンを獲得した実績があり、この店、恐らく日本一早い父子のラーメン店に間違いないのです。

シルクのスカーフのようなワンタンは雲を呑む味わいです

ラーメンの域を超えた料理と思えば、手打中華700円、手打チャーシューメン900円、手打ワンタンメン1050円の価格は絶対に高くない!中華そばに対する認識がガラリと変わること請け合いの美味なのです。
 「先の震災で丼の3分の2は割れてしまい、壁やガラスなどにも被害は及びましたが、ご家族に怪我も無く3週間後には営業再開にこぎつけました。鈴木さんのご家族が、美味い中華そばで被災地の皆さんを励まし続けてくれることを願ってやみません」

手打ち麺にスープが良くからむのです

○「手打中華すずき」
福島県白河市瀬戸原4-9 tel.0248-22-3392
定休日 火曜日(火曜祝日の場合は翌日)
営業時間 11時30分~19時(材料が無くなり次第閉店)
駐車台数 20台

板倉あつし