大阪府の堺市と、羽曳野市・藤井寺市の広範囲に点在する「百舌鳥・古市古墳群─古代日本の墳墓群─」が、2019年7月6日、世界遺産に登録された。考古学ファンならずとも、古代ロマンへの興味がふくらむ。堺市は、“コロナ禍”が完全には収まらない2021年3月13日、「百舌鳥古墳群ビジターセンター」を開館した。JR阪和線「百舌鳥駅」から東へ徒歩約5分。前方後円墳の仁徳天皇陵の「前方」部に隣接した平屋建ての落ち着いた建物。入館無料で、さまざまな展示品で古墳の基礎知識を学ぶことができ、シアターでは上空から見た堺市内の古墳の8K映像が楽しめる。“古墳グッズ”の販売などもあり、気軽に利用できる観光拠点だ。
世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」は、構成資産(古墳)45件。堺市の百舌鳥エリア、羽曳野市と藤井寺市にまたがる古市エリアに大別される。両エリアとも約4キロ四方の広さに、古墳が点在している。百舌鳥エリアの主な古墳は、国内最大の仁徳天皇陵をはじめ、履中天皇陵、ニサンザイ古墳、御廟山古墳、反正天皇などがある。古墳の数としては百舌鳥エリアとほぼ同数の古市エリアは、応神天皇陵、仲哀天皇陵、允恭天皇陵などだ。
百舌鳥古墳群ビジターセンターを訪れたのは、オープン2日目の14日の日曜日で、入館は10分待ちだった。館内には、古墳の歴史や、全国分布、前方後円墳の築造当時の模型などが分かりやすく展示されている。現在の古墳は木々が生い茂り、「森」のように見えるが、築造当時は、土を盛り、石を敷き詰め、埴輪を並べた外観だった。
一通りの知識を頭に入れて、シアターへ。8K映像は、半円形のスクリーンと床にも映し出され、空撮中心で迫力満点。約10分だが、ナレーションはないので、展示を見て百舌鳥古墳群の全体像を知ってから見た方が分かりやすいだろう。
もっと詳しく知りたい…と思ったら、徒歩3、4分のところに堺市博物館がある。基本展示だけなら大人100円。古墳の石棺模型、さまざまな形の大小の埴輪が展示されている。ここでも、200インチの大型スクリーンで、古墳の空中散歩を楽しめる。また、堺市の歴史展示もある。戦国時代、鉄砲の生産地であり、貿易で栄えた町の姿を偲ばせる。特別展は別料金で500円(基本展示込み)だ。
世界遺産の古墳群は、格好のサイクリングコースにもなっている。古代日本の姿に思いをはせるのも楽しい。古墳エリアには、何軒かの喫茶、カフェで「古墳カレー」が出されている。ご飯を前方後円墳の形にして皿の中央に置き、その周りにカレールーという盛り付けだ。これまでに、3カ所の店で食べてみたが、“古代の味”がしたかどうかは、ご想像にお任せする。
(井上年央/フリーライター)
TOPの画像
古代への入り口…百舌鳥古墳群ビジターセンター(大阪府堺市)