郷に入れば郷に従う、旅人の品格|コヤナギユウ

「パンデミック」という言葉が世界中を駆け抜けて1年が経ちました。国境はもちろん、県境をまたぐ移動も慎むようにいわれ、自重の時が続いています。旅行関係者に今後の見通しを聞くと、2021年はまだ自由に移動するのが難しいだろう、といいます。昨年3月に、老舗の大手旅行ガイド誌と、Webの若者向け旅行サイトと、フリーライターのわたしとで、カナダへアザラシの赤ちゃんウオッチングツアーの取材へ行ったのですが、記事にできたのはわたしだけでした。旅行、特に海外となると旅情を刺激することさえ自粛しなければいけない空気がありました。

海外旅行情報に関する検索数は、わたしのブログでも顕著に落ち込みました。一方で、古い記事でも注目が集まっているのが国内旅行の情報、特に温泉地のレポートです。先日、自宅で行っているような仕事を持ち込んで滞在する「ワーケーション」を体験するため、群馬県は前橋のアートホテル「SHIROIYA HOTEL 白井屋ホテル」に7日間滞在しました。群馬といえば「温泉王国」。せっかくなので週末は近くの温泉地で過ごそうと調べたところ、どこの旅館も満室でした。温泉旅への注目は、検索数だけでなく行動として表れているようです。宿泊はあきらめ、伊香保温泉で源泉近くの「伊香保露天風呂」を楽しみ、バスの運転手さんおすすめの「水沢うどん松島屋」をいただいて帰って来ました。

「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」、手を変え品を変え、政府は自粛を要請してきます。でも、これはある意味しかたがないことだと思います。自粛要請を解除してしまうと、それを盾にして傍若無人に振る舞う人が現れることは、想像に難しくありません。いまは確かに慎まなければならない時です。だからといって、部屋に閉じこもることが推奨されているとも、思いません。

自分の体調に異変がなければ、飛沫に気をつけて、その町や店のルール(マスクの着用や手先の消毒など)に従うだけ。仮に過剰な対策に疑問を感じても、郷に入れば、郷に従えです。これって「感染防止対策」に限らず、旅人には当たり前のことですよね。価値観や恐怖心は人・土地それぞれ。旅人はその町のしきたりに従うだけです。

年内は自由に旅行することが難しいと考える旅行関係者が多い一方で、「5年後は?」と聞くと、ほとんどの人は「自由に旅行ができるようになる」といい、2、3年後には正常化するという見込みが多数です。

感染拡大防止対策は、どこにいたってやることは一緒。そうであるならば、慎みをもって旅する「旅人としての品格」が問われるときだなぁと感じつつ、地元のスナックなんかで大口開けて笑い合える日が、1日も早く戻ることを、願っています。

(コヤナギユウ)

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ワーケーション滞在したアートホテル「SHIROIYA HOTEL 白井屋ホテル」