【会員の新刊紹介】 山本鉱太郎(やまもと・こうたろう)著『小林一茶なぞ・ふしぎ旅』

小林一茶なぞ・ふしぎ旅

◇山本鉱太郎(やまもと・こうたろう)著『小林一茶なぞ・ふしぎ旅』
(崙書房出版☎04-7158-0035/2500円税別)

小林一茶は松尾芭蕉とともに知名度抜群の俳人だがその足跡に謎も多い。
芭蕉の20倍の2万句も読んで広く親しまれ研究者も多いのに、ふるさと信州・野尻湖近くの柏原(現信濃町)から江戸に出て10年間ほど、第2の故郷になった北総地方(千葉・茨城県境付近)で過ごす青春時代の記述が極めて少ないという。
北総の流山に住んで30数年、一茶を追い続ける著者はこれまで一般の研究が北総について「おおむねおろそか」と指摘する。

上京してどんな暮らしをしたか、下町で転々職を変え極貧生活を送った。
句会の縁で北総・馬橋(現松戸市)で油屋を営む俳人大川立砂(りゅうさ)を頼りにし、流山でみりん醸造業の傍ら俳句をたしなむ秋元双樹(そうじゅ)によく面倒を見てもらい経済的支援も受けた。
井上ひさしの戯曲「小林一茶」や藤沢周平の小説「一茶」なども織り交ぜ豊富な地図と図版で検証を試みる。
なぜふるさとを後にしたか、江戸のどこに住んだか、職探しは、雅号一茶のいわれは、15年ぶり帰郷した心境は、貧乏俳人がなぜ西国に旅立ったか、どんな風貌だったか、俳人花嬌(かきょう)は恋人か、好物は何だったか、なぜ小動物や小便の句が多いか、なぜユーモラスか、反権力か負け惜しみか、なぞなぞ形式で足跡に迫る。

秋元家旧宅は平成初め流山市指定記念物第1号に認定され市が買い取る。
解明に熱を込める著者は「小林一茶寄宿の地保存整備審議会」会長に推され解体復元、造園を進め9年前に一茶双樹記念館が開館した。
今後も北総ゆかりの伊能忠敬、田中正造、杉村楚人冠らを取材していく予定だ。
前旅ペン代表会員の健筆は続く。
(文・林 莊祐)

=「旅びと」2014年1月号掲載

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