太田 博

イタリア原産のユニークなチーズ「カチョカバロ」が、今、静かなブームを呼んでいる。国内でも数か所で製造しているが、乳製品の名門・小岩井農場(岩手県雫石町)でも最近作り始めたというから、業界も目の離せない存在になってきたのだろう。

3年ほど前、チーズ売り場で初めて見た時は、まずその形に目を見張った。テニス・ボール大で、ダルマともヒョウタンとも見える愛嬌のある形は、どう見ても食べものらしくない。

ヒョウタンのように吊るして成熟を待つ(小岩井農場で)

名前を見て、また驚いた。舌を噛みそうだ。さらに、値段を見て、片目をつむってしまった。200gで約850円。うーん、いい値段だ。だが、生来の食い意地と好奇心には勝てなくて、財布をはたいた。

食べて、3度目、4度目の僥倖を味わうことになった。

そのままスライスで、おろしで粉にしてなど、さまざまある食べ方の中から、これまた珍しい「焼いて食べる」を選んだ。1㎝ほどの厚さに切り、フライパンで、両面に焼け焦げが出来る程度に焼く。とろりとしたミルキーな食感、コクのある味わい、何より、口中に含んでいる間の満足感が何とも言えない。赤ワインに一番合う味と、みたのだが…。

1㎝ほどに切って、焦げ目が出来るくらい焼くのが美味い食べ方

名前は、イタリア語で「馬上のチーズ」を意味する。馬の鞍の両側にブラブラと吊るして、成熟と乾燥を待つのだ。なんだか、作り方も楽しそうだ。

太田 博